映画『アパートの鍵貸します』は、1960年代のアメリカを舞台にした心温まるラブコメディ。
サラリーマンのバクスターが上司の不倫に巻き込まれ、自己犠牲的に自分の部屋を貸し出すという切ない状況から始まります。
上司の不誠実さとフランへの片思い、そして彼自身の成長を描いたこの作品は、ユーモアと涙が交錯する名作です。
本記事では、映画のあらすじやネタバレ感想、心に残る名言・名セリフを解説しながら、映画の魅力をお伝えします。
映画「アパートの鍵貸します」解説
物語は、ニューヨーク市の保険会社で働くサラリーマン、ジャック・レモン演じる「C.C. バクスター」が主人公です。
バクスターは、自分のアパートを上司たちに貸し出して、出世を目指しています。
しかし、彼のアパートが上司たちの不倫相手との密会に使われることにより、バクスター自身が巻き込まれていくことになります。
そんな中、シャーリー・マクレーン演じるフラン・キルボーンという女性と出会い、人生を変えることに。
バクスターとフランの関係が発展する中で、切なくも美しい愛の物語が描かれます。
キャスト
- ジャック・レモン(C.C. バクスター役): 本作の主人公。ニューヨークの保険会社に勤めるサラリーマンで、昇進を目指して自分のアパートを上司たちに貸し出している。
- シャーリー・マクレーン(フラン・キルボーン役): バクスターのアパートを利用する上司の愛人。彼女の不倫が物語の鍵を握り、バクスターとの関係が発展する。
- フレッド・マクマレイ(ジャクソン役): バクスターの上司で、フランの不倫相手。
- リチャード・アディソン(ドクター役): バクスターの同僚で、彼の友人。
評価と受賞
『アパートの鍵貸します』は、公開当時から高い評価を受け、アカデミー賞で5部門にノミネートされ、そのうち作品賞、監督賞(ビリー・ワイルダー)、脚本賞を受賞しました。
また、ジャック・レモンとシャーリー・マクレーンの演技も絶賛されました。
この映画は、ロマンティック・コメディの金字塔とされ、ビリー・ワイルダーの監督としての名声をさらに高める作品となりました。
映画「アパートの鍵貸します」あらすじ・ネタバレ
主人公のC.C.バクスター、通称バドはニューヨークの保険会社に勤める平凡なサラリーマン。
一見目立たない存在ですが、心の中では大きな野心を抱えています。
バドは出世を目指すあまり、自分のアパートを上司たちの浮気の場として貸し出すという、倫理的に問題のある行動に手を染めています。
その見返りとして、上司からの勤務評価を上げてもらい、社内での地位を少しずつ上げようとしているのです。
バドのアパートは上司たちにとって便利な隠れ家となり、彼自身はその間、寒空の下で時間を潰す日々を送っています。
そんなバドの生活は滑稽でありながらも、どこか切なさを感じさせます。
自分の行動に対する罪悪感を抱きつつも、出世のためにその状況を甘んじて受け入れているのです。
フランとの出会い
バドの職場には、エレベーターガールとして働くフラン・キューブリックという女性がいます。
フランは明るく魅力的な女性で、バドは密かに恋心を抱いていました。
ある日、勇気を出してフランをデートに誘ったバド。
フランもその誘いを受け入れ、バドは幸せな気持ちで待ち合わせ場所へ向かいます。
しかし、フランは約束の場所に現れません。
その理由は、フランには既に恋人がいたからです。
そして、その恋人とはバドの上司であり、既婚者のシェルドレイク部長だったのです。
バドが恋焦がれていたフランは、実は上司の浮気相手だったという事実に、彼は大きなショックを受けます。
バドの葛藤と決断
フランがシェルドレイク部長と関係を続けていることを知ったバドは、複雑な感情に揺れ動きます。
自分の部屋が二人の密会の場として使われていることに耐えられなくなりながらも、出世のためにその状況を受け入れ続けるべきか、それともフランへの愛を優先して上司に立ち向かうべきか、バドは悩みます。
ある日、フランがシェルドレイクとの関係に疲れ果て、絶望的な行動を取ろうとする場面に遭遇したバド。
彼はフランを必死に救い、その出来事をきっかけに、自分の中での優先順位を見直す決意を固めます。
クライマックスと結末
バドは最終的に、自分の部屋をシェルドレイクに貸すことを拒否し、彼に対して毅然とした態度を取ります。
その結果、シェルドレイクから脅迫され、会社を辞めざるを得なくなります。
しかし、バドは自分の行動に誇りを持ち、フランへの愛を貫くことを選びました。
一方、バドの真心に触れたフランは、シェルドレイクとの関係に終止符を打ち、バドの元へと向かいます。
二人はお互いの気持ちを確かめ合い、新たな人生を歩むことを決意します。
映画「アパートの鍵貸します」あらすじ・ネタバレのテーマと魅力
『アパートの鍵貸します』は、笑いと涙を通じて人間の本質を描き出した作品です。
バドの成長やフランとの関係の変化を通じて、観客に「本当に大切なものは何か」を問いかけます。
さらに、ニューヨークという大都会の中での孤独感や、他人とのつながりの大切さも、この映画の大きなテーマとなっています。
ビリー・ワイルダー監督の巧みな演出と、ジャック・レモン(バド役)、シャーリー・マクレーン(フラン役)の見事な演技によって、この作品は時代を超えて愛される名作となりました。
笑いの中に切なさが漂い、登場人物たちの選択や行動に共感せずにはいられない、そんな魅力が詰まった映画です。
『アパートの鍵貸します』は、単なるラブコメディではなく、人間の弱さや強さを描いた深みのある物語です。
何度観ても新たな発見があり、観るたびに心を打たれる作品です。
映画「アパートの鍵貸します」名言・名セリフ解説
「Just for laughs」
このセリフは上司がフランに対して発するもので、「ただ楽しむために」という意味です。
上司は自分の行動を軽く捉え、フランとの関係を本気ではなく、遊び感覚で楽しんでいることを示しています。
彼の不誠実な態度を象徴しており、映画のテーマである冷徹な人間関係の一面を表しています。
「Right away」
バクスターがフランに言うセリフで、「ただちに」という意味です。
フランが困っている時、バクスターは即座に反応し、彼女を助けるために行動します。
この言葉はバクスターの誠実さや優しさを強調しており、どれだけ真摯な思いを持っているかが伝わります。
「Crumble」
バクスターがフランに向かって言う言葉で、物事がうまくいかないことや崩れることを意味します。
「崩れる」「滅びる」というニュアンスで使われ、バクスターが自分の恋愛がどうなるかに対して、諦めの気持ちを抱いていることがうかがえます。
フランが上司への未練を捨てられない現実を受け入れつつ、バクスター自身もその複雑な心情を表しています。
「You should be in love with someone like me」
フランがバクスターに言うセリフで、「あなたみたいな人を好きになれたらいいのに」という言葉です。
フランはバクスターの優しさに感謝し、彼のような人を好きになれたらよかったという気持ちを表しています。
このセリフは、フランがバクスターの魅力に気づきつつも、心が上司に向かっている現実との間で葛藤していることを示しています。
映画のテーマと名セリフの関係
『アパートの鍵貸します』は、サラリーマン社会の冷徹さ、誠実さと裏切り、愛と自己犠牲など、さまざまなテーマを扱った作品です。
登場人物たちのセリフは、彼らの内面の葛藤や社会的な矛盾を反映しており、その深みが映画のテーマを強調しています。
バクスターとフランの関係の進展を描いたセリフは、二人の成長を感じさせる感動的な要素となっています。
映画「アパートの鍵貸します」感想
なんとも切なく、でも心温まる気持ちが残りました。
最初はバクスターが上司の不倫に巻き込まれて、恋愛感情とは裏腹に、ただ自分の部屋を貸し出すという辛い立場に置かれるところから始まります。
上司の冷酷さやフランへの無責任な態度が本当に腹立たしくて、こんな人たちに振り回されるバクスターがかわいそうだなと思いました。
でも、バクスターの人間性がどんどん素晴らしく見えてきて、特にフランが自殺未遂をしてしまうシーンでは優しさが際立ちます。
看病する姿に胸が熱くなりました。
カードゲームをして元気づけるシーンも、バクスターの誠実さと真心が伝わってきて、ただの「部屋貸し男」じゃないってことを強く感じました。
フランが最終的に上司への思いを断ち切れないものの、バクスターの誠実な気持ちに気づく瞬間も切ないけれど美しくて、微笑みが心に残ります。
バクスターが最後に上司に鍵を投げつけるシーンは、彼が自分の生き方を選ぶ決意を感じさせて、すごく爽快でした。
この映画、単なるコメディやロマンスではなく、サラリーマン社会の冷徹さを描きながらも、愛と誠実をテーマにした深いメッセージが込められていて、観た後にじんわりと心に残る作品でした。
まとめ
『アパートの鍵貸します』は、バクスターが自己犠牲と誠実さを通して、自分らしい生き方を見つけるまでの心温まる物語です。
上司の冷徹さやフランとの複雑な関係を描きながらも、最後にはバクスターが自分を貫くシーンに胸がすっとします。
名セリフ「Just for laughs」や「You should be in love with someone like me」など、登場人物たちの感情が凝縮されたセリフも印象的。
ラブストーリーとしてだけでなく、サラリーマン社会を風刺したコメディとしても楽しめる、心に残る名作でした。
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