マイケル・ムーア監督といえば「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「シッコ」で知られる社会派ドキュメンタリーの巨匠。
今回紹介する「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」は、そんなムーア監督がこれまで以上にユーモラスかつ鋭く、世界を旅しながらアメリカの問題点を浮き彫りにする作品です。
この映画、最初見たときは「えっ、侵略ってタイトルだけど本当にそんな感じで進むの？」ってちょっと身構えてしまったんですが、全然違いました。
むしろ、あったかい気持ちになるような、ちょっと胸がチクっとするような、そんな不思議な体験だったんですよね。
映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」解説
「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」は、2015年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画です。
監督・脚本・主演を務めたのは、あの「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「シッコ」で知られるマイケル・ムーア。
アメリカ社会の抱える問題を、世界各国の「いいところ」を持ち帰るというスタイルであぶり出していく、ちょっと変わった旅ドキュメンタリーになっています。
この作品のユニークなところは、「侵略」という言葉をユーモラスに使っている点です。
本当の戦争ではなく、イタリア、スロヴェニア、フィンランド、ノルウェー、ドイツなどを回って、彼らの素晴らしい制度や考え方を「盗んで」くるというコンセプトになっているんですね。
そして、ムーアらしい皮肉と愛情がたっぷり詰まった作りで、笑いながらもアメリカ社会の課題が浮かび上がってくる仕掛けです。
ただ国を批判するだけでなく、「かつてアメリカが持っていたはずの理想を、もう一度思い出そう」という温かいメッセージも感じられます。
実際に映画を観ると、世界にはこんなに素敵なシステムがあるのかと驚かされるばかり。
しかも、それらは別に夢物語じゃなくて、ちゃんと現実に機能しているという事実が、じわじわと効いてきます。
個人的には、イタリアのバカンス制度や、フィンランドの宿題なし教育のシーンなんかは、ちょっと羨ましくなってしまいました。
いやほんと、こんな働き方や生き方ができたら、もっと人生楽しいのにって。
全体を通して、世界を見渡して学ぶことの大切さ、そして「変えようと思えば変えられる」という希望を感じさせてくれる、そんな作品です。
映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」あらすじ・ネタバレ
映画は、マイケル・ムーアがアメリカ国防総省に呼び出されるところから始まります。
これまでアメリカは何度も戦争をしてきたのに、状況は一向に良くならない。
そんな中でムーアに与えられたミッションは、「世界を侵略して、いいところを盗んでこい」というものです。
この設定からしてもう面白くて、でも皮肉たっぷり。
ムーアは戦車でも銃でもなく、アメリカ国旗一本だけを持って、世界各国を巡る旅に出ます。
イタリアで見た「働き方」の理想
まず最初にムーアが訪れたのはイタリアでした。
ここで驚かされるのが、有給休暇の多さ。
なんと、8週間もの有給休暇があるのです。
それに加えてランチタイムもたっぷり2時間。
しかも12月には13か月分の給料が支給されるという、まさに夢のような制度。
取材先の工場では、経営者が「社員は家族だ」と語るシーンが出てきます。こ
の言葉、ただの綺麗事じゃないんですよね。
本当に社員の幸せを大切にしているのが伝わってきました。
これを見て、「あぁ、働くって本当はこういうことなんだ」って、じんわり心があたたかくなったのを覚えています。
スロヴェニアの学費無料に驚く
続いてムーアが向かったのはスロヴェニアです。
ここでは、教育に対する考え方が根本から違っていました。
大学の学費が、外国人留学生も含めて全員無料なんです。
「お金がないから進学できない」なんて悩みが存在しない世界。
これ、今の日本にも痛いほど刺さりますよね。
スロヴェニアの大統領にアポなしで取材を申し込んだムーアが、あっさりと面会できたエピソードも印象的でした。
教育を国益と捉える発想、その潔さに胸がすく思いがしました。
フィンランドの教育システムに感動
フィンランドでは、教育の現場を徹底取材します。
かつてはアメリカと同レベルだった学力が、今や世界トップクラス。
その秘密は「宿題をなくしたこと」でした。
子供たちは放課後を思いっきり遊んで、自主性を育てる。
そんな当たり前のことが、どうしてこんなにも難しいんでしょう。
フィンランドでは私立校もほとんど存在せず、どの地域でも教育の質に差がないそうです。
このシーンを見ながら、自分の学生時代をちょっと思い出しました。
詰め込み型の勉強に追われていたあの頃、果たして本当に学ぶ楽しさを感じていたのか…。
そんな気持ちが胸にぽつりと浮かんできたのです。
ノルウェーの刑務所に見る人権意識
次にムーアが向かったのはノルウェーでした。
ここでは刑務所のあり方に衝撃を受けます。
囚人たちはアパートのような個室で生活し、パソコンやゲーム機も自由に使えます。
ノルウェーの刑務所は「刑罰」ではなく「更生」を目的としているのです。
しかも、死刑制度もありません。
無差別テロの犯人ですら懲役21年の判決。
被害者家族が語った「殺人犯にも死刑にする権利はない」という言葉が、あまりに重たく響きました。
正直、簡単には受け入れられない部分もありました。
でも、人間として向き合うという覚悟に、深い尊敬の念を抱きました。
ドイツの労働環境と歴史教育
ドイツでは、労働者が企業運営に深く関わる仕組みが紹介されます。
役員の半分は労働者代表で占められていて、不正も告発しやすい構造。
さらに、勤務時間外の上司からの連絡は禁止されています。
この仕組みを知ったとき、心から羨ましいと思いました。
日本でも「働き方改革」とか叫ばれているけれど、根本の文化が違うんだなと痛感しました。
そしてもう一つ、ドイツは歴史教育にも力を入れています。
過去の過ちを直視し、未来に活かす。その真摯な姿勢に胸が熱くなりました。
各国を巡って見えてきたもの
ムーアはこのあと、フランス、ポルトガル、アイスランドにも足を運びます。
どこでも、人々が大切にしている価値観は「人間らしさ」でした。
興味深かったのは、取材先で「もともとこの制度を考えたのはアメリカだった」と何度も言われる場面です。
かつてアメリカが夢見た理想は、今や他国で花開いている。
皮肉であり、でも希望でもあるような、不思議な感情が湧きました。
映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」を観た感想
映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」を観終わった後、正直、かなり衝撃を受けました。
マイケル・ムーア監督らしい、ちょっとした皮肉とユーモアで進んでいくドキュメンタリーでしたが、どこか温かみがあるんですよね。
彼が言っている「アメリカが抱える問題を解決するために、世界各国からいいところを盗んでこい」というのが、まさに映画の核心をついていると思いました。
最初にイタリアで、8週間もの有給休暇を取るシーンが出てきて、最初は「そんなの夢のようだな」って思ったんですけど、その後、ムーアがイタリアの労働者たちと話しているところで、「家族同様に扱う」という考え方に触れたとき、ああ、そういう視点があるんだなと心に響きました。
日本ではなかなか聞かない話ですよね。
これだけでも「こんな風に働けたら、もっと人生楽しくなるのに」って思ってしまいました。
また、スロヴェニアの学費無料のシステムについても感動しました。
アメリカの学生が、奨学金の返済に苦しんでいるという現実を知っていたので、「学費無料」というだけで、なんだか希望が持てる感じがしました。
お金で学びを制限するのは、教育本来の意味から外れてしまっている気がして、スロヴェニアの考え方が本当に素晴らしいなと思いました。
フィンランドの教育システムも衝撃的でした。
宿題をなくしたことで学力が向上したという事実に、最初は「本当に？」と半信半疑でしたが、子どもらしく生活させることで自主性を育むという理念に納得しました。
日本だと、どうしても「勉強＝宿題」の図式が先行しがちなので、その反転の発想が新鮮でした。
最終的に、「アメリカの良かったところをもう一度思い出そう」というメッセージを受けて、心の中で少しジーンときました。
映画を観ながら、アメリカがかつて抱えていた理想を再確認させられると同時に、自分たちが目指すべき社会のあり方を改めて考えさせられました。
実際には難しいかもしれませんが、せめて少しでもその理想に近づくために、何かを変えていけたらなと思います。
終わりには、少し笑いながらも、どこかホッとした気持ちで映画を終えることができました。
あのユーモアの中に、たくさんの深いメッセージが詰まっていて、観終わった後も、なんだか心に残っているんですよね。
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『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』は、社会問題に鋭く切り込むドキュメンタリー作品で、世界各国の制度や価値観を比較しながら、アメリカ社会の課題を浮き彫りにしています。
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まとめ
映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』は、アメリカ社会が抱える深刻な問題に対して、世界各国の成功したシステムを学び、それらをアメリカに「侵略」しようというユニークな視点で描かれたドキュメンタリー作品です。
マイケル・ムーア監督はイタリアの有給制度、スロヴェニアの学費無料政策、フィンランドの教育制度、ノルウェーの刑務所の改革など、世界各地の社会システムを紹介し、アメリカにもそのような改革を導入する必要性を訴えています。
映画を通して、国によってどのように社会福祉や教育が支えられているのかを知り、またアメリカ社会の現状を再認識することができます。
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