映画『ヒメアノ~ル』は、冴えない青年・岡田と、彼が働くカフェでアルバイト先の先輩・安藤、さらに安藤が片思いしているユカとの三角関係が織りなすサスペンスコメディです。
原作は古谷実のマンガ『ヒメアノ~ル』。物語は、岡田とユカ、そして高校時代の同級生でありシリアルキラーである森田との関わりを描いています。
サスペンス、ミステリー、コメディ要素が絡み合い、予測不可能な展開が観客を惹きつけます。
映画「ヒメアノ~ル」解説
「何も起こらない日々」に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田。
同僚の安藤が想いを寄せるユカが働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一と出会うが、その後ユカから森田にストーキングされていると知らされる。
- 製作年:2015年
- 上映時間:99分
- ジャンル:サスペンス、ミステリー、コメディ
- 監督:吉田恵輔
- キャスト:
- 岡田(濱田岳):冴えない青年
- 森田(森田剛):シリアルキラー
- ユカ(佐津川愛美):安藤の片思い相手
- 安藤(ムロツヨシ):岡田のバイト先の先輩
- 和草(駒木根隆介):森田の高校時代の友人
- ほか
登場人物(キャスト)
- 岡田(濱田岳): 冴えない青年で、清掃会社でバイトをしながら無気力な日々を送っています。背が小さいことや、「器が小さい」と言われたことを気にしています。ユカに好意を持ち、安藤から頼まれてユカとの関係を見守ることになります。高校時代に森田と仲が良かったものの、イジメがきっかけで関係が悪化してしまいます。
- 森田(森田剛): 高校時代にイジメを受けていたが、卒業間際にそのイジメの主犯格であった河島を殺害。シリアルキラーとして無情な行動を取る人物。周囲に暴力をふるい、他人を無慈悲に殺す。岡田とは過去に友人だったが、今はその関係は完全に断絶しています。
- ユカ(佐津川愛美): 安藤の片思い相手で、ストーカー被害に悩んでおり、森田がその犯人だと疑っています。毒舌の幼馴染アイとの関係が深く、将来の夢はお嫁さんになること。岡田に惹かれ、積極的に行動を起こします。
- 安藤(ムロツヨシ): 岡田のバイト先の先輩で、ユカに強烈に片思いしています。奇妙なキャラクターで、岡田のことを「岡村」と間違えたり、ユカへの思いを一心に抱いています。彼の行動が物語を大きく動かすことになります。
- 和草(駒木根隆介): 高校時代、森田と共にイジメを受けた人物。現在は会社に勤務しており、婚約者との生活を送っていますが、森田にお金を脅し取られ、彼の命令に従うことを余儀なくされています。
映画「ヒメアノ~ル」あらすじ(ネタバレ含む)
岡田はバイト先の先輩である安藤から、片思いしているユカの話を聞きます。
安藤がユカの周りに潜むストーカーの存在を気にして、岡田に探りを入れさせます。
岡田は偶然、高校時代の同級生・森田と再会し、安藤の頼みで森田の動向を探ります。
森田は一見普通の人物のように見えますが、何か違和感を感じる岡田。
さらに、ユカは森田にストーキングされていると疑っており、岡田にそのことを伝えます。
ユカの身を守るため、岡田と安藤はユカの周りを警護することを決めます。
森田の正体
岡田とユカは次第に親しくなり、安藤に秘密で付き合い始めます。
しかし、安藤はユカに強烈に恋をしており、その思いはますます募ります。
一方、森田は岡田に近づき、矛盾した言動を繰り返しますが、その正体がだんだんと明らかになっていきます。
森田は高校時代にイジメを受けていたことがきっかけで、その性格が豹変し、暴力的になっていたことが岡田に知られていきます。
高校時代
森田の暴走は止まらず、岡田とユカの関係を知った森田は二人を執拗に追い詰めます。
また、森田の過去が少しずつ明らかになり、彼が高校時代にいじめの主犯格を殺害していたことが分かります。
森田は、岡田とユカの幸せを壊すことに執着し、最終的に安藤をも巻き込んでしまいます。
岡田はユカを守るために、過去の行いに対する懺悔を始め、物語はますます緊迫していきます。
結末
物語のラストでは、岡田とユカが逃げる場面が描かれます。
森田は暴力的な行動を強化し、岡田とユカを追い詰めるものの、岡田は必死にユカを守ろうとします。
最終的に、岡田と森田は激しい戦いを繰り広げ、結末へと向かいます。
岡田はユカを助けるために過去の罪を償いながら、森田との壮絶な対決が描かれます。
映画「ヒメアノ~ル」最後の意味
映画『ヒメアノ~ル』のラストは非常に衝撃的で、観客に深い印象を残します。
映画全体を通じて描かれる人間の狂気や心理的な葛藤、そして登場人物たちの運命が交差していく様子において、ラストシーンはその集大成ともいえる瞬間です。
ここではその最後のシーンについて、私なりに考察してみます。
岡田の過去と彼の罪の償い
映画の中で岡田(濱田岳)は、過去に高校時代の同級生である森田(森田剛)との関係が原因で罪悪感に苛まれてきました。
岡田は森田が受けていたいじめに加担していたことを悔い、そしてその後の森田の暴力的な行動や殺人に深く関与してしまうことになります。
ラストで彼がユカ(佐津川愛美)を救おうとする場面では、過去の罪を償おうとする心情が強く表れています。
ユカが森田に命を狙われる中で、岡田は過去の自分を乗り越えようと必死に行動します。
自分の罪を悔い、ユカを守ろうとする姿は、成長を示唆していると捉えることもできます。
過去の行いに対する懺悔と、それに向き合おうとする姿勢がラストシーンで強調され、
償いの一環としてユカを守ろうとする行動に繋がるのです。
森田の狂気と最期
森田は、物語を通じて「シリアルキラー」として描かれ、どんどんその狂気が露呈していきます。
周囲の人々を無差別に殺し、暴力を振るう様子は、過去のトラウマや精神的な崩壊が大きな原因だと理解できます。
しかし、ラストシーンでは、片足を失いながらも岡田に笑いかけるシーンが描かれます。
このシーンは、森田の狂気が終息し、彼が過去の岡田との関係を思い出して少しだけ「人間らしさ」を見せる瞬間とも捉えられます。
森田にとって、岡田はただの被害者ではなく、ある意味で「親友」であり、過去に戻りたいという欲求が表れているのでしょう。
彼の笑顔には、もしかすると、かつての無邪気な少年のような部分がほんの少しだけ垣間見えるのかもしれません。
結末の解釈とテーマ
ラストのシーンで、岡田と森田がともに死を迎えるような形で終わりますが、これが象徴的です。二人の過去が繋がっており、その繋がりが物語を通じて切り離すことができないことを示唆しているように感じます。
岡田は森田との関係を断ち切ろうと必死に努力してきましたが、最終的に破滅の道を歩むことになってしまいます。
この展開は、二人の運命がどれほど交錯していたかを物語っており、過去の因果が消えないことを象徴しています。
また、ラストシーンでの岡田の死に対しての皮肉的な描写—森田が笑顔を見せる一方で、岡田が無力に終わる点—は、映画全体が暗示してきたテーマである「人間の狂気」や「運命の残酷さ」を深く掘り下げるものです。
結局、岡田と森田はそれぞれの道で破滅し、誰も救われないという現実を突きつける終わり方です。
このことは、映画が描こうとした「人間の暴力性」「心理的な崩壊」といったテーマを強く反映しています。
終わりなき狂気の象徴
映画『ヒメアノ~ル』は、最終的に「終わりなき狂気」を象徴するような結末を迎えます。
森田のような人物は、過去のトラウマや人生の不満から、どんどん暴力的な方向へと向かってしまいます。
岡田もその影響を受けて、無意識のうちに森田と同じような破滅的な運命を歩むことになります。
ラストで岡田がユカを守るために命をかける行動は、ある意味で彼の「良心の回復」を象徴していますが、その行動が無駄に終わることで、「人間の運命には抗えない」というメッセージを強調しています。
森田の笑顔は、狂気が完全に終息することはなく、無限に続く暴力と破滅の輪廻を暗示しているのです。
映画「ヒメアノ~ル」感想
映画『ヒメアノ~ル』を観たとき、正直かなり衝撃的でした。
最初は普通の恋愛ものかな、と思っていたんですが、どんどん展開がエグくなっていって、気がつけば手に汗握るようなスリリングな状況に。
特に、森田がどんどん狂気を増していく姿に圧倒されました。
暴力的な行動や、無敵感が次第に恐ろしさを感じさせるんですよね。
でも、何と言っても印象的だったのは、岡田の心の葛藤と成長です。
最初はどこか頼りない印象だった岡田が、次第に自分の過去に向き合い、ユカを守ろうと必死に戦う姿には感動しました。
それでも、最後は森田との関係から逃れられないんですよね。その結末には心が締め付けられる思いがしました。
特にラストシーンが辛い。岡田がどんなに努力しても、森田との因縁を断ち切ることはできず、最終的には二人とも破滅的な結末を迎えます。
岡田がユカを守ろうとする行動が、逆に何も変わらないことに気づいて、何とも言えない無力感を感じました。
森田の笑顔がまた、どこか哀れで、彼が本当は誰かに愛されたかったのかもしれないという気持ちを抱かせます。
この映画のラストは、何かすごく重いメッセージが込められていると感じました。
人間は過去に縛られ、狂気に引き寄せられてしまうことがある。
それでも、どうしても逃れられない運命があるということを痛感しました。
誰も救われない、そんな厳しい現実を見せつけられた感じです。
映画全体を通して、かなり重いテーマを扱っているけれど、それがあってこその衝撃的な終わり方だったなと思います。
正直、しばらくその余韻に浸ってしまいました。それだけ強烈に心に残る作品でした。
まとめ
『ヒメアノ~ル』は、ただのサスペンスやコメディではなく、登場人物たちの心理描写に重きを置いた作品です。
岡田が過去と向き合い、森田がどこまで暴走していくのか、観客は目を離せません。
結末も予測不能で、最後までドキドキが止まりませんでした。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました^^
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