実話をもとにした映画「ザ・シークレットマン」は、アメリカ政治史上最大のスキャンダルといわれるウォーターゲート事件の裏側を描いています。
FBI副長官だったマーク・フェルトが、大統領の不正を暴くために内部告発者「ディープ・スロート」として行動し、その結果、ニクソン大統領が辞任へと追い込まれる過程が描かれています。
政治と報道、権力と正義の狭間で揺れる一人の男の選択が、歴史をどのように動かしたのかを振り返ります。
映画「ザ・シークレットマン」解説
2017年に公開されたアメリカ映画で、リーアム・ニーソンが主人公のマーク・フェルトを演じています。
監督はピーター・ランデズマンで、実際の事件をもとにしたストーリーとなっています。
ウォーターゲート事件といえば、ワシントン・ポストの記者たちがスクープを連発し、ニクソン大統領を辞任に追い込んだというイメージが強いですが、その背後にはFBI内部の葛藤がありました。
本作では、長年FBIに仕えたフェルトが、組織と信念の間で揺れながらも真実を世に伝えるために奮闘する姿が描かれています。
ウォーターゲート事件とは？映画の背景を解説
映画をより深く理解するために、ウォーターゲート事件について少し解説します。
1972年、アメリカ大統領選挙を前に、民主党本部が入っていたワシントンD.C.のウォーターゲート・ビルに何者かが侵入し、逮捕される事件が発生しました。
調査が進むうちに、犯人たちがニクソン大統領の選挙チームと関係していたことが明らかになり、大統領側は事件をもみ消そうとします。
しかし、FBIの内部では、この隠蔽工作に反発する動きがありました。
副長官のマーク・フェルトは、政府の圧力に屈せず、報道機関に情報を提供することで真実を暴こうと決意します。
この事件が大きく報道されるにつれ、ニクソン政権の不正が次々と明るみに出て、最終的にニクソン大統領は辞任することになりました。
映画『ザ・シークレットマン』ネタバレあらすじ
2017年公開のアメリカ映画『ザ・シークレットマン』は、ウォーターゲート事件の裏側を描いた政治サスペンス。
FBI副長官だったマーク・フェルト（リーアム・ニーソン）が、政府の圧力に屈せず、大統領の不正を暴くためにマスコミへ情報を提供し、最終的にニクソン大統領辞任へと導いた実話をもとにした作品です。
フーバー長官の死
1972年、アメリカではベトナム戦争への反戦運動が激化し、ニクソン大統領の再選が危ぶまれる状況でした。
そんな中、長年FBIを率いてきたJ・エドガー・フーバー長官が突然死去します。
副長官マーク・フェルトは、長年フーバーの片腕としてFBIの秩序を守ってきました。
当然、自分が次期FBI長官になると考えていましたが、ホワイトハウスは司法省のパトリック・グレイをFBI長官に指名。
これにより、FBIは政府の支配下に置かれる危機に直面します。
ニクソン政権はFBIの独立性を奪い、自らの不正を隠蔽しようとしますが、フェルトは頑なにこれを拒否。
「FBIは大統領の道具ではない」とグレイに警告し、独立を貫こうとします。
ウォーターゲート事件
深夜、フェルトのもとに「民主党本部（ウォーターゲート・ビル）に何者かが侵入し逮捕された」との報告が入ります。
事件の詳細を調べると、逮捕された5人のうち数名がCIAやFBIの元職員だったことが判明。
さらに、彼らはホワイトハウスの関係者と繋がっている可能性が浮上します。
フェルトはFBIの捜査を指揮しますが、ホワイトハウスからの圧力が強まり、司法省が「48時間以内に捜査を終了しろ」と指示。
さらに、大統領顧問ジョン・ディーンはフェルトに「情報を外部に漏らしていないか？」と詰問します。
フェルトは明らかに捜査妨害を受けていることを確信し、政府の圧力に対抗するために極秘裏にワシントン・ポストの記者ボブ・ウッドワードと接触します。
ここで、フェルトは「ディープ・スロート」という匿名の情報提供者として活動を始めます。
一方、家庭ではフェルトの妻オードリーが、8年間行方不明の娘ジョアンのことで精神的に不安定になっていきます。
仕事に没頭するフェルトに対し、妻は「もう辞めて家庭に戻ってほしい」と訴えますが、フェルトはFBIの使命を優先させます。
ニクソン再選
フェルトはウッドワード記者と密かに会い、ウォーターゲート事件がニクソン政権の関与する大規模な不正事件であることを伝えます。
ワシントン・ポストは次々とスクープを報じますが、ニクソン政権は「フェイクニュースだ」と批判し、事件との関与を否定。
事件が公になっているにもかかわらず、ニクソンは大統領選挙で圧勝し、権力をさらに強固なものにします。
フェルトは結果に失望しながらも、FBIの独立を守るために戦い続けます。
しかし、ニクソン政権はFBIの盗聴を開始し、フェルトを監視。
さらに、「FBI内部に情報を漏らしている者がいる」として内部調査が進められ、フェルトの立場はますます危うくなります。
そんな中、フェルトはついに娘ジョアンの居場所を突き止めます。
ヒッピーコミューンに住んでおり、フェルトとは異なる価値観のもとで生きていました。
フェルトは彼女に「家に帰ってこないか」と話しますが、ジョアンは戸惑いながらも母オードリーと再会し、久しぶりに家族の温かさを感じます。
結末
フェルトはタイム誌の記者にも接触し、ニクソン政権がFBIの捜査を妨害し、証拠隠滅を図っていることを暴露。
さらに、議会の公聴会ではグレイが「ニクソンの指示でFBIの文書をホワイトハウスに渡した」と証言し、ついにニクソンの不正が明るみに出ます。
ニクソンは追い詰められ、1974年に辞任を発表。
フェルトはこの結果を静かに受け止めます。
しかし、フェルト自身もフーバー時代に行った違法捜査の責任を問われ、裁判で有罪判決を受けることになります。
さらに、妻オードリーは精神的に追い詰められ、自ら命を絶ってしまいます。
それでもフェルトは自分の信念を貫き、後にレーガン政権の恩赦を受けて名誉を回復。
そして、2005年。
ついに「自分こそがディープ・スロートだった」と公に認め、長年の謎に終止符を打ちました。
映画の最後、フェルトがFBIの公聴会で「私はディープ・スロートか？」と問われるシーンで沈黙する場面が描かれ、物語は終わります。
映画「ザ・シークレットマン」ラストシーンの考察
映画のクライマックスでは、フェルトが自身の行動の結果を受け止める場面が描かれています。
ウォーターゲート事件の追及が進み、ニクソン大統領が辞任することが確実視される中で、フェルトはFBIを去る決意をします。
家族との関係も大きく変化しました。
長年行方不明だった娘とついに再会することができたものの、フェルトの選択は妻との関係にも深い影を落としました。実際、フェルトの妻はのちに自ら命を絶っています。
また、フェルト自身も後年、FBIの違法捜査の責任を問われ、裁判で有罪判決を受けます。
しかし、レーガン大統領時代に恩赦を受け、名誉が回復されました。
映画の最後、フェルトは自身が「ディープ・スロート」だったことを正式に認めることになります。
長年にわたり謎とされてきた内部告発者の正体がついに明かされる瞬間は、歴史的にも重要な意味を持ちます。
映画のメッセージと現代への影響
「ザ・シークレットマン」は、権力と正義の間で揺れ動く一人の人物の葛藤を描いた作品です。
FBIの副長官という立場でありながら、政府の不正を暴くために内部告発を行うことがどれほどのリスクを伴うのかがリアルに描かれています。
この映画が描くテーマは、現代にも通じるものがあります。
権力者が司法機関を意のままに操ろうとする構図、報道の自由の重要性、そして内部告発者の役割は、今でも多くの国で議論されています。
特に最近では、内部告発者の存在が企業や政府の不正を暴く大きなカギとなっています。
そのため、この映画を観ることで、真実を守るためにどんな覚悟が必要なのかを改めて考えさせられます。
映画「ザ・シークレットマン」感想
映画『ザ・シークレットマン』を観終わった後、なんとも言えない気持ちが胸に残りました。
まず、実際の歴史をベースにした話ということで、物語自体がとてもリアルで重く感じました。
ニクソン大統領のウォーターゲート事件を知っている人にはもちろん、そうでない人にも、この映画は強烈なインパクトを与えるんじゃないかなと思います。
特に、マーク・フェルトという人物の決断には心から驚かされました。
彼が内部告発者「ディープ・スロート」として、どれだけのリスクを背負ってまで真実を暴こうとしたのか、その勇気には本当に感動しました。
もちろん、彼が家族や自分自身に負った代償も大きく、その葛藤が痛いほど伝わってきました。
リーアム・ニーソンの演技がまた素晴らしくて、フェルトの内面にある複雑な感情をしっかり表現していたなと感じました。
普段はアクション映画で強い男のイメージがある彼ですが、この映画ではまさに「真実を追い求める男」として、非常にリアルで魅力的でした。
ただ、映画を観終わった後は、フェルトがどれだけ多くのものを犠牲にしてまで行動したのかを考えさせられました。
正義を貫くためには、時に自分の大切なものを失う覚悟が必要だと感じました。
でも、その勇気があったからこそ、ウォーターゲート事件の真実が明らかになり、アメリカの歴史を大きく変えることができたんだと思います。
この映画を観ると、権力や腐敗がいかに社会を支配するか、そしてその中でどう立ち向かうかということについて深く考えさせられます。
もし自分があの立場だったら、果たしてフェルトのように真実を追い求められるのか、正直言って自信がありません。
でも、フェルトのような人がいたからこそ、世界が少しずつ変わるんだと思います。
『ザ・シークレットマン』は、ただの政治ドラマではなく、もっと深い人間ドラマとして心に残る作品でした。
まとめ
「ザ・シークレットマン」は、ウォーターゲート事件をFBI内部の視点から描いた作品であり、内部告発者としての葛藤と覚悟が描かれています。
リーアム・ニーソンの重厚な演技も相まって、政治サスペンスとして非常に見応えのある作品となっています。
フェルトが自らの正義を貫いた結果、アメリカの歴史が大きく変わりました。
この映画を通じて、権力と報道の関係、そして正義のために戦うことの意味を改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。
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