映画『動脈列島』は、1975年に公開された社会派サスペンス映画で、清水一行の同名小説を原作としています。
監督は増村保造、主演は近藤正臣さん、田宮二郎さん、関根恵子さん、梶芽衣子さんと豪華なキャストが揃っています。
この映画は、新幹線騒音問題をテーマに、個人の怒りが社会的な問題へと広がっていく過程を描いた作品です。
映画「動脈列島」解説
新幹線の開通により、沿線住民の生活環境が悪化し、公害問題が深刻化します。
これに反発した過激派の若者たちは、新幹線の爆破を計画し、警察はその阻止に全力を尽くします。
物語は、過激派のリーダーと警察の捜査官との緊迫した攻防を描き、社会問題を鋭く浮き彫りにしています。
キャスト
- 滝川保:田宮二郎
- 秋山宏:近藤正臣
- 君原知子:関根恵子
- 落合芙美子:梶芽衣子
- 長田総裁:山村聡
- 種村秘書:平田昭彦
- 相良公安一課長:近藤洋介
- 明石特別捜査班班長:井川比佐志
- 山崎捜査一課長:小池朝雄
- 北川科警研員:守田比呂也
- 中野公安一課長:勝部演之
- 村田捜査一課長:渥美国泰
- 水野刑事:灰地順
- 山口刑事:藤村泰介
- 新幹線訴訟団々長:加藤嘉
- 桑田医師:佐原健二
- 猿渡教授:中条静夫
- 篠島研修医:中島久之
- 秋山の父・甲介:久米明
- 秋山の母・勝代:文野朋子
- 野上ヤス:田中筆子
- 野党の運輸委員:渡辺文雄
- 動労委員長:稲葉義男
- 国労委員長:山本清
- 乗客:芹明香
- 編成局長:高橋昌也
- 伊藤ディレクター:峰岸徹
- 新聞記者1:成瀬昌彦
- 新聞記者2:神山繁
- 新聞記者3:鈴木瑞穂
- 飲み屋の客:山本廉
映画「動脈列島」あらすじ・ネタバレ
物語の舞台は名古屋市熱田区。
新幹線が住宅密集地を時速200キロ以上の高速で通過するたびに、すさまじい騒音が地域住民を苦しめています。
その音はあまりにも大きく、戦時中にB-29爆撃機の音に怯えた記憶を持つ老婆が、新幹線の音に過剰反応してしまうほど。
精神的に追い詰められた老婆は、ついに命を落としてしまいます。
主人公である青年医師・秋山宏は、この悲劇に深い怒りを覚えます。
彼は老婆の死を無関心に扱う国鉄に対して強い憤りを感じ、恋人である看護婦の君原知子と共に復讐を計画します。
秋山の復讐計画
秋山は、知子に病院からニトログリセリンを少量盗み出すよう依頼します。
しかし、彼はその理由を彼女には伝えません。
そして、ニトログリセリンを手に入れた秋山は、「ヨーロッパ旅行に行く」と偽り行方をくらませます。
その翌日、新幹線の車内で大事件が発生。
トイレが詰まり、原因を調べると中からニトログリセリンと脅迫状が見つかります。
その脅迫状には、「国鉄が新幹線の騒音対策を行わなければ10日以内に新幹線を転覆させる」という内容が記されていました。
この事件は国鉄や警察を震撼させます。
警察の捜査と秋山の動き
国鉄と警察は極秘に捜査本部を設置。
警察庁の犯罪科学捜査研究所所長である滝川保(田宮二郎さん)が捜査の指揮を執ることになりました。
滝川は、脅迫状の内容が名古屋新幹線騒音公害訴訟団の要求と一致していることに気付き、その背後に秋山の存在を感じ取ります。
一方、秋山は次なる計画を進めていました。
彼は秋葉原の電気街で電波発信機を製作し、それを使って新幹線を再び止める計画を立てます。
さらに大胆にも、国鉄総裁宅に直接出向き、要求を突きつけるという行動に出ます。
この行動は、秋山が単なる犯罪者ではなく、国鉄に自らの声を届けようとする強い意志を持っていることを示しています。
最後の計画と警察の包囲網
秋山の最終計画は、坂野坂トンネル付近で新幹線を転覆させることでした。
彼はトンネル内にブルドーザーを停車させ、列車を脱線させる準備を進めます。
一方、滝川率いる警察は秋山の動きを追い詰め、ついに彼の潜伏先を特定。
犯行当日にはトンネル周辺を厳重に警戒し、秋山の計画を阻止しようとします。
計画当日、秋山は献血輸送車を盗み、検問を突破してトンネルへと向かいます。
しかし、警察の厳重な警備によりブルドーザーの操作を阻止され、秋山の計画は失敗に終わります。
恋人の知子も警察に確保されており、彼女の説得を受けた秋山はついに降伏します。
映画「動脈列島」あらすじ・ネタバレ
映画は新幹線開通に伴う公害問題を取り上げ、当時の日本社会が抱えていた環境問題への関心を反映しています。
新幹線がもたらした発展の裏側で、住民の生活環境が悪化し、そこから生まれた反発が過激派の活動に繋がります。
過激派による爆破計画と、それを阻止しようとする警察の対立を描きながら、社会の不平等や環境破壊の問題が浮き彫りになります。
過激派と警察
映画の中心には過激派の若者たちと、それに対峙する警察という構図が描かれています。
過激派は新幹線に対して爆破を計画し、その背景には社会的不満や絶望感が存在しています。
一方で警察は法と秩序を守る立場として過激派を抑え込もうとします。
この対立は単なる暴力的な衝突にとどまらず、どちらの側にも一方的な正義があるわけではなく、視聴者に深い問いを投げかけます。
キャラクターの描写
映画のキャラクターたちは非常に複雑で、それぞれが個人としての信念や葛藤を抱えています。
主人公である田宮二郎演じる滝川保は、警察官として義務感から過激派を追い詰める一方で、個人的な悩みや過去を背負っています。
また、過激派のリーダーを演じる近藤正臣の秋山宏は、理想と現実のギャップに悩む姿が描かれています。
これらのキャラクターの内面の葛藤は、単なる善悪の対立を超えて、社会における個人の責任や選択の重要性を浮き彫りにします。
映画の映像美と緊迫感
増村保造監督の演出は、緊迫感に満ちた映像表現が特徴です。
特に爆破シーンや追跡劇では、視覚的な迫力だけでなく、登場人物たちの心理的な動きも巧みに描かれています。
新幹線が象徴的に登場し、その進行する速度と対立するキャラクターたちの心情が、映画全体にスリリングなテンポを与えています。
社会的メッセージ
『動脈列島』は単なるエンターテインメントではなく、当時の日本社会に対する鋭い批評を含んでいます。
新幹線の開通という近代化の象徴的な出来事に対して、それを支える側と反対する側との対立が描かれることで、経済発展と環境保護、社会的公正のバランスについて観客に考えさせる作品となっています。
映画「動脈列島」感想
まずその社会的なメッセージに強く引き込まれました。
新幹線の開通という日本の発展を象徴する出来事を背景に、環境問題や公害が深刻な社会問題として描かれているのが印象的でした。
物語が進んでいくうちに、ただのサスペンスやアクション映画にとどまらず、人間ドラマがきちんと織り交ぜられていることに気づきました。
特に、過激派と警察の対立がただの善悪の戦いではなく、それぞれの立場にある複雑な思いが描かれている点が面白かったです。
滝川保の警察官としての義務感と個人の葛藤、秋山宏の過激派リーダーとしての理想と現実のギャップが、物語を深くしていました。
どちらも一見正義の側にいるように思えるけれど、どちらも限界に苦しんでいる。
そのリアルさが、ただの対立構造にとどまらず、社会の問題そのものに対する鋭い問いかけを感じさせました。
新幹線が進む中で登場人物たちがそれぞれの立場で何かを守ろうとする姿が印象に残ります。
爆破を計画する過激派の若者たちには、彼らなりの理由と情熱があることがわかり、警察もまた彼らを無理にでも止めようとするものの、その背後には悲しみや悩みが見え隠れします。
最終的には、彼らの間で繰り広げられる激しい攻防が、観ている自分に深い感動を与えました。
ただ、何より衝撃だったのはラストシーン。予想していた結末とは違って、非常に切ない気持ちになりました。
登場人物たちが抱えていたもの、そしてそれがどうなったのかを思うと、社会の矛盾や個人の選択がどう影響してくるのか、深く考えさせられました。
この映画は単に過激派と警察の戦いを描いているだけでなく、それぞれの立場や心情に焦点を当てていて、観るたびに新たな発見がある作品だと思います。
社会問題に対する自分なりの考え方が揺さぶられる一作でした。
まとめ
映画『動脈列島』は、新幹線の開通を背景にした社会派サスペンス映画で、増村保造監督の手によって1975年に公開されました。
原作は清水一行の小説で、環境問題や公害に反発する過激派と、それを阻止しようとする警察との対立を描いています。
ただのサスペンス映画にとどまらず、当時の日本社会が抱えていた問題を鋭く浮き彫りにし、登場人物の心理描写を通じて、社会的なメッセージを強く伝えています。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました^^
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