映画『どうしても触れたくない』は、ヨネダコウの同名BL(ボーイズラブ)漫画を原作とした、2014年に公開された日本の映画です。
原作ファンをはじめ、多くの人に愛されているこの作品は、心に傷を抱えた二人の男性が、少しずつ心を通わせていく繊細な恋愛ドラマを描いています。
今回は、この映画の物語のその後や、恋愛に対する考察を深めながら、あらすじを親しみやすい文章でお届けしていきます。
映画「どうしても触れたくない」あらすじ
物語は、転職先で働き始めたばかりの主人公・嶋が、エレベーターの中で新しい職場の上司・外川と出会うところから始まります。
外川は一見するとクールで大人びた雰囲気を持っていますが、どこか無邪気で人懐っこい一面もあり、そのギャップに惹かれる嶋。
一方、嶋は過去に辛い恋愛経験を持ち、そのせいで他人との距離を取るようになっていました。
嶋はゲイであることを周囲に知られたくない、でも心の奥では誰かに理解されたいという葛藤を抱えていました。
前の職場で同僚にゲイだと噂されたこともあり、人との関係に慎重になっていたのです。
しかし、外川はそんな嶋の心の壁を壊すかのように自然体で接してきます。
特に印象的なシーンは、外川が嶋のランチに付き合う場面。
職場では誰にも話しかけられず一人で食事を取っていた嶋に、外川が無邪気に声をかけ、二人でランチを共にするようになるのです。
この小さな出来事が、嶋の心に少しずつ変化をもたらします。
二人の距離が縮まる夜:心の揺らぎ
ある夜、飲み会の帰りに外川と嶋は二人きりになります。
酔った外川が何気なく嶋に寄り添い、家まで送っていく場面で、嶋はふと彼に触れたくなる感情を抑えきれなくなります。
これまで、自分の本心を押し殺してきた嶋にとって、外川は特別な存在となり始めていたのです。
やがて、二人はお互いの距離を縮め、関係が深まっていきますが、嶋は過去の恋愛のトラウマから「このままでいいのか」という迷いを抱えます。
傷つくことを恐れ、心からの愛情を素直に表現できない嶋に対し、外川はどこか大人びた余裕を見せつつも、真剣に向き合おうとします。
嶋にとって、外川は自分とは違い、何でもポジティブに受け止められる人のように見えました。
しかし、実は外川にも過去の恋愛に対する苦い経験があり、その背後には誰にも見せない孤独や悲しみが隠されていたのです。
二人の試練と別れ:決断の時
物語が進むにつれて、外川の本社への栄転が決まります。
これにより、二人の関係は重大な岐路に立たされます。
外川が遠くに転勤してしまうという現実に、嶋は自分の気持ちをどうすべきか悩み始めます。
外川が自分から離れていくかもしれないという不安に、嶋は再び心を閉ざし始めます。
これまで以上に、外川と距離を取ろうとするのですが、外川はそんな嶋に対してまっすぐな思いを伝えます。
「お前が好きだ」と外川が告白するシーンは、観ている人の心に深く響く瞬間です。
しかし、嶋は自分の心の壁を完全には乗り越えられず、外川と別れる決断をします。
自分に自信がなく、恋愛に臆病な嶋は「幸せになれるはずがない」と思い込んでしまうのです。
外川との別れのシーンは非常に切なく、観客の心を揺さぶります。
二人の間には深い感情があるにも関わらず、それぞれの抱える問題が彼らの幸せを阻んでしまうのです。
この時点で、物語は一度のクライマックスを迎えます。
映画「どうしても触れたくない」その後考察!
映画『どうしても触れたくない』は、別れの場面で一度幕を閉じますが、実はその後の展開が気になるところです。
原作の漫画では、さらに二人の物語が描かれており、再び再会を果たすエピソードが存在します。
外川が本社へ転勤し、しばらくの時間が経った後、嶋は自分の心の中にある「後悔」に気づきます。
外川と過ごした時間が、どれほど大切で幸せだったかを、離れて初めて実感するのです。
自分の臆病さや、傷つくことを恐れるあまりに、愛する人を遠ざけてしまったことへの後悔が、嶋の中で強くなっていきます。
そして、偶然にも再会の機会が訪れます。
嶋と外川は再び出会い、お互いに自分の気持ちを正直に話すことができるようになります。
外川は、嶋が再び自分の前に現れたことを喜び、再び一緒に歩んでいく決意をします。
二人は今度こそ、お互いの心をさらけ出し、傷つくことを恐れずに向き合います。
恋愛には痛みが伴うこともあるけれど、その痛みを乗り越えてこそ本当の幸せが待っている――そんなメッセージが、作品全体を通して伝わってきます。
恋愛における「触れたくない」感情とは?
この物語のタイトル『どうしても触れたくない』には、恋愛における「触れたいけど怖い」「傷つきたくない」という感情が込められています。
嶋は過去の恋愛経験から、他人に心を開くことに対して強い恐れを抱いています。
自分がゲイであることを周囲に知られることで受けるかもしれない偏見や差別、そして愛する人に裏切られる可能性を常に頭の片隅に置いています。
そんな彼にとって、外川との関係は一種の試練でもありました。
恋愛は、自分の弱さや本音を相手に見せることが不可欠です。
しかし、それができないと、相手との距離が縮まるどころか、逆にどんどん遠ざかってしまいます。
嶋は外川に対して強い気持ちを持っていたものの、その感情を素直に表現することができませんでした。
それが、二人の関係に暗い影を落とす原因となっていたのです。
外川はそんな嶋を理解し、彼の心の中にある「触れたくない」部分にも気づいていました。
しかし、それでも嶋を愛し、彼を受け入れる覚悟を持っていたのです。
外川の一途な愛情が、嶋の閉ざされた心を少しずつ開いていく過程は、非常に感動的でした。
再会後の物語とそのメッセージ性について
嶋と外川の再会後の物語は、まさに「二度目のチャンス」という言葉がぴったりです。
一度はすれ違い、心の壁が二人を引き裂きましたが、それぞれが時間をかけて自分と向き合うことで、再び関係を築くことができるようになります。
この展開には、読者や観客に対する大切なメッセージが込められています。
私たちは、過去の経験や恐れに縛られ、自分の気持ちを閉じ込めてしまうことがあります。
特に、恋愛においては一度の失敗や裏切りが心に深い傷を残し、新しい一歩を踏み出すのをためらわせることが少なくありません。
しかし、本作では「恐れを乗り越えることの重要性」が丁寧に描かれています。
外川は、嶋の不器用さや過去のトラウマを受け入れ、彼自身が成長する時間を与えました。
一方の嶋も、自分の弱さや恐れを克服し、再び外川と向き合う決断をします。
この二人の姿は、恋愛だけでなく、日常生活における人間関係にも通じる普遍的なテーマを私たちに教えてくれます。
愛することは「信じること」
再会後の嶋と外川の関係は、以前とは違い、より強固な信頼で結ばれるようになります。
愛することの本質とは、相手を信じることにほかなりません。
それは、自分をさらけ出し、相手に心を預ける勇気が必要なものです。
嶋はその勇気を得るまでに時間がかかりましたが、外川との再会を通じて「信じることの大切さ」を学んでいきます。
また、この信頼は一方的なものではなく、外川も嶋に対して同じように心を開いていきます。
恋愛は「与える側」と「受け取る側」が一方的に存在するものではなく、互いに補い合い、支え合うものです。
本作では、嶋と外川がそのバランスを見つけ、関係をより深めていく過程が感動的に描かれています。
再び歩き出す二人:その先の未来
再会後の二人は、一緒に未来を歩んでいく決意をします。
原作のエピローグでは、嶋が以前とは異なり、より穏やかで自信に満ちた姿を見せる場面があります。
外川もまた、嶋と過ごすことで自分の孤独を癒し、満たされていきます。
この二人の姿は、恋愛が「個人の成長」につながることを象徴しています。
嶋と外川が共に歩む未来は、きっと簡単なものではありません。
それでも、二人ならば乗り越えていける、そんな希望に満ちたエンディングが観客に温かさを与えます。
映画「どうしても触れたくない」!映画と原作の違い
映画『どうしても触れたくない』は原作をベースにしていますが、映像作品ならではの魅力がたくさん詰まっています。
特に、役者たちの表情や微妙な仕草が、原作の繊細な感情表現を補完する形で描かれています。
一方で、原作漫画には映画にはないエピソードが描かれており、二人の関係がさらに深く掘り下げられています。
原作を読むことで、映画だけでは見えなかった二人の心の動きや背景をより理解できるでしょう。
たとえば、嶋が外川と再会するまでの葛藤や、外川の孤独の本当の意味などは、原作の方が丁寧に描写されています。
映画と原作の両方に触れることで、この物語の全体像がさらに明確になるはずです。
映画「どうしても触れたくない」ファンの反響
映画『どうしても触れたくない』は、BLというジャンルにおいて重要な作品として評価されています。
この映画をきっかけにBLに興味を持ったという観客も多く、BL文化を一般の人々にも広げる一助となりました。
また、この作品は恋愛や人間関係の本質に触れているため、性的指向を問わず多くの人に共感を呼び起こしました。
「愛とは何か」「信頼とはどういうことか」といった普遍的なテーマが、観客一人ひとりの心に問いかけを投げかけるのです。
特に、嶋の「自分に自信が持てない」という姿は、多くの人が共感できるポイントです。
恋愛において、自分をさらけ出すことに対する恐れを感じたことがある人は少なくないでしょう。
この作品は、そんな人たちに「それでも一歩を踏み出してみよう」と勇気を与えてくれる存在なのです。
映画「どうしても触れたくない」ネタバレ感想
この映画は「恋愛」に対する期待や不安、そして自分と向き合う難しさをこんなにも丁寧に描いてくれるのか、と感動せずにはいられませんでした。
主人公の嶋の気持ち、すごくわかるんです。過去の傷や恋愛に対する臆病さって、誰しも一度は感じたことがあるんじゃないでしょうか。私は恋愛だけでなく、普段の人間関係でも「これ以上近づいたら傷つくかも」と思って、一歩引いてしまうことがあるので、嶋の「これ以上踏み込まないでほしい」という気持ちが痛いほど理解できました。
それに加えて、嶋の「自分なんて愛される価値がないんじゃないか」という自己否定の感情も胸に響きました。映画では彼の心の中の葛藤や不安が表情や間で丁寧に表現されていて、観ているうちに「私もこんなふうに誰かの気持ちを突き放してしまったことがあるな」と、いろいろ考えさせられました。
一方で、外川の存在が本当に大きくて、こんな人が隣にいてくれたら人生どれだけ救われるんだろうって思いました。外川って、ただ優しいだけじゃなくて、嶋の弱さをきちんと受け止めた上で接してくれるんですよね。
特に印象に残っているのは、外川が嶋に「俺はお前が好きなんだ」と真っ直ぐに伝えるシーンです。恋愛の告白って緊張したり、自分をよく見せようとするものだと思うんですが、外川の告白にはそんな計算が一切なくて、ただ「好き」という気持ちを嶋に伝えたいんだなっていうのがすごく伝わってきました。
でも、そんな外川の気持ちを素直に受け止められない嶋の姿を見て、「わかるけどもどかしい!」っていう気持ちになったのも事実です(笑)。傷つくのが怖いから逃げる嶋を責めることはできないけれど、外川が一途に彼を思っている分、そのすれ違いがとても切なかったです。
外川が本社に異動することが決まったとき、嶋は「どうせ自分はまた捨てられる」と思い込んでしまうんですよね。外川に対しての気持ちは確かにあるのに、それを伝えることが怖くて、一人で耐えようとする嶋の姿が本当に苦しくて、胸がギュッとなりました。
別れ際のシーンでは、嶋が涙を流しながらも外川を突き放してしまいます。観ている側としては、「お願いだから素直になって!」と思わず叫びたくなりましたが、嶋の気持ちも痛いほどわかるから何も言えないんです。
それでも、外川が最後まで嶋を責めずに見守る姿がまた泣けるんですよね。あのシーン、セリフが少ないのに二人の感情がすごく伝わってきて、思わず涙がこぼれました。
終盤の再会シーンは、本当に心が温かくなる場面でした。嶋が少しずつ自分の心の傷と向き合い、外川に再び会いに行くシーンでは、「よかった…」と自然に涙が出てしまいました。
嶋が再び外川に向き合おうとする姿は、ただ恋愛の話ではなく「自分を許す」ことの大切さを教えてくれたように感じます。過去にどんな傷を負っていても、それを抱えたままでも、人は幸せを掴むことができるんだという希望が、この再会シーンには詰まっていました。
『どうしても触れたくない』は、恋愛映画でありながら、もっと深いところにある「人と向き合うことの難しさ」を描いた作品だと思いました。恋愛のドキドキ感や甘さだけでなく、人が誰かを愛することの恐れや葛藤をこんなにも丁寧に描いてくれる作品はなかなかないです。
観終わった後、「私もこんなふうに誰かと向き合いたい」「自分の弱さを認めて、もう少し素直になれたらいいな」と考えさせられました。恋愛に限らず、友情や家族関係にも通じるテーマなので、いろんな人におすすめしたい映画です。
嶋と外川の物語は、甘さも切なさもあって本当に心に残る作品でした。観るたびに新しい発見がありそうなので、またじっくり観直したいです。
まとめ
映画『どうしても触れたくない』は、単なる恋愛物語ではありません。
人生の中で、誰もが経験するであろう「恐れ」や「葛藤」に真正面から向き合い、それを乗り越えていく過程を描いています。
この作品を観た後には、「愛することの意味」や「自分の心とどう向き合うべきか」を考えさせられるはずです。
嶋と外川の物語は、私たちに人を愛することの喜びや難しさ、そしてそれを乗り越えた先にある幸せを教えてくれます。
恋愛や人間関係に迷ったとき、この作品を思い出すことで、新たな一歩を踏み出す勇気を得られるかもしれません。
ぜひ、映画を観た方も原作を読んだ方も、この物語の魅力をじっくり味わい、自分自身の人生に活かしてみてください。
そして、嶋と外川が見つけた愛の形を通じて、「触れたくない」部分にあえて触れてみることで、人生がどれだけ豊かになるのかを実感してみてくださいね。
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