映画『永遠に僕のもの』(原題:El Ángel)は、1970年代初頭のアルゼンチンで実際に起きた連続殺人事件を基にした作品です。
その主人公カルリートスのモデルとなったのが、カルロス・ロブレド・プッチ。
「黒い天使」とも呼ばれ、その美しい容姿と凶悪な犯行で世間を震撼させました。
今回は、実在のカルロス・ロブレド・プッチの人物像と、映画との違いについて詳しく解説します。
映画「永遠に僕のもの」実話のモデルのカルロス・ロブレド・プッチとは?
カルロス・ロブレド・プッチは1952年、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに生まれました。
家は中流家庭で、父親は自動車メーカーに勤めていて、母親はドイツ系の家庭出身。
裕福ではないけれど、恵まれた環境で育ったようです。
小さい頃はピアノを習ったり、語学もできたりと、どちらかというとインテリ寄りなタイプだったそうですが、なんとなく人と打ち解けるのが苦手な少年だったといわれています。
実際、幼少期は特に目立つような問題行動もなく、教師からは「礼儀正しい」「口数は少ないけど真面目」と評価されていました。
だからこそ、のちに連続殺人犯として知られるようになるとは誰も想像できなかったはずです。
少年期から徐々に歪んでいった内面
10代になると、カルロスの行動に少しずつ変化が見られるようになります。
まず、学校の規則に従わなくなったり、クラスメイトの持ち物を盗んだりと、小さなトラブルが重なっていきました。
本人はあまり罪の意識を感じていなかったようで、むしろスリルを楽しんでいたふしもあるとか。
最初の逮捕は16歳のとき。オートバイの盗難事件で警察に捕まります。
ですが、この時点ではまだ「ちょっとグレた若者」くらいにしか思われておらず、深刻な問題としては扱われていませんでした。
ただ、この頃から「他人の命を軽んじるような発言をしていた」という証言もあって、すでに内面では危うさが育っていたのかもしれません。
11人を殺害したアルゼンチン犯罪史上最悪の若者
1971年、カルロスが19歳のときに連続殺人を開始します。
殺害されたのは合計11人。しかも、その犯行の動機は強盗目的だけでなく、「口封じ」や「ちょっとした気まぐれ」というものも含まれていたと言われています。
実際、警察の取り調べでも「殺した理由は特にない」と語っていたという証言が残っています。
さらに驚くのは、どの犯行にもまったく後悔の様子がなかったことです。
犯行現場ではダンスを踊っていたとか、鏡の前で髪を整えていたとか、信じられないような振る舞いが記録されています。
当時の新聞や報道番組では「天使のような顔をした悪魔」として大きく取り上げられました。
1972年に逮捕されてからは、1980年に終身刑が確定し、いまも刑務所に収監されたまま。
2025年現在も、50年以上も服役を続けており、アルゼンチンで最も長く投獄されている受刑者の一人になっています。
社会に与えたインパクトと今も続く注目
カルロス・ロブレド・プッチの事件が社会に与えた衝撃はあまりにも大きく、裁判や報道の内容が今も多く語り継がれています。
何より恐ろしいのは、事件そのものよりも、「普通の家庭で育った青年が、突如として大量殺人に及んだ」という点でした。
特別に虐待されていたわけでもなく、極端な貧困に苦しんでいたわけでもない。その“普通さ”が、人々に恐怖を与えたのだと思います。
映画『永遠に僕のもの』では、このカルロスの持つ二面性がとても印象的に描かれています。
天使のようなルックスで無邪気に笑いながら、躊躇なく人を殺す。
そのギャップは、実際の事件を知ったうえで観ると、より深く刺さるものがありました。
映画「永遠に僕のもの」実話と映画の比較
映画『永遠に僕のもの』の主人公「カルリートス」は、実在の人物カルロス・ロブレド・プッチをモデルにしています。
ただし、映画の中では本名を出さず、舞台も時代背景も微妙にずらされています。
この変更によって、リアルな犯罪記録に依存しすぎず、物語としてのバランスがとられているように感じました。
実際のカルロスは非常に冷酷な連続殺人犯でしたが、映画のカルリートスにはどこか詩的でミステリアスな魅力が加えられていて、「理解不能だけど目が離せない存在」として描かれています。
そのあたりは、かなり映画的な脚色がなされている部分です。
映画は友情と依存を強調した物語に
大きく違うのは、映画でのカルリートスがラモンという友人に深く惹かれていく描写です。
この二人の関係性が物語の軸になっていて、恋とも執着ともとれるような危うい感情がじわじわと描かれています。
でも、現実のカルロスにラモンのような人物がいたという証拠はないようです。
たしかに実話にも共犯者は存在していましたが、映画のように濃密な関係だったかというと、そこは明確には記録されていません。
むしろ、実際のカルロスは他人との深い人間関係を築くのが苦手だったという証言もあり、映画のような感情の揺らぎや依存は、創作要素が強い部分といえそうです。
ただ、その「ラモンとの関係」を通じて描かれるカルリートスの内面は、現実のカルロスが持っていた“支配欲”や“孤独”に通じるものがあり、完全なフィクションとは言い切れない深みがありました。
犯行動機と描写の違いが印象を変える
映画ではカルリートスが犯行に至る場面がどこか夢のように淡々と進んでいきます。
暴力がとても静かで、残酷だけど美しくすら感じてしまう不思議な演出です。
それに対して、現実のカルロスの犯行はもっと粗暴で、衝動的で、罪悪感のかけらも見えなかったとされています。
たとえば、映画ではカルリートスが盗みに入った先で突然人を殺すシーンがありますが、それは演出的にはまるで日常の一部のように見えてしまうほどです。
現実の事件記録はもっと血生臭く、無差別的で、むしろ恐怖の連鎖そのものです。
そこには映画のようなロマンチックさはありません。
でも、それでも映画を観終わったあと「カルリートスのような人物って実際にいたのか」と思わせてくれるのは、演出や人物描写の巧みさによるものだと思いました。
映画を観て感じたこと
映画『永遠に僕のもの』を観て、まず印象的だったのは、主人公カルリートスの美しさと冷酷さのギャップです。
ロレンソ・フェロが演じるカルリートスは、無邪気な笑顔を見せながらも、平然と人を殺す姿が恐ろしかったです。
また、ラモンとの関係性も複雑で、友情とも愛情とも取れる微妙な距離感が描かれており、観ていて引き込まれました。
実在のカルロス・ロブレド・プッチについて調べてみると、映画では描かれていない残虐な犯行も多く、改めて彼の恐ろしさを感じました。
映画はあくまでフィクションとして楽しむべきですが、実際の事件を知ることで、より深く作品を理解できると思います。
まとめ
映画『永遠に僕のもの』は、実在の連続殺人犯カルロス・ロブレド・プッチをモデルにした作品で、美しさと狂気が交錯する独特の世界観が魅力です。
映画と実際の事件にはいくつかの違いがありますが、どちらも興味深く、観る者に強い印象を残します。
実際の事件を知ることで、映画の背景や登場人物の心理をより深く理解できるでしょう。
興味を持った方は、ぜひ映画を観て、カルリートスの魅力と恐ろしさを体感してみてください。
また、実在のカルロス・ロブレド・プッチについても調べてみると、映画とはまた違った視点で作品を楽しめるかもしれません。
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