映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を観たとき、物語としての完成度の高さに驚いたけれど、同時に「これってどこまで本当なの?」と気になったのも事実です。
感動したからこそ、現実の出来事がどうだったのか深く知りたくなってしまいますよね。
映画「イミテーション・ゲーム」実話どこまで?
映像としてはものすごく引き込まれる作品でした。
エニグマ解読の場面はスリリングで、感情のぶつかり合いや葛藤の描写も見応えがありました。
でもよく調べてみると、歴史的事実と異なる部分がいくつかあるようです。
まず印象的だったのは、登場人物に実在しない名前がいくつか含まれていること。
ジョーン・クラークは実在の人物ですが、ほかの解読チームの面々はフィクションの要素が強いみたいです。
それから、チューリングが独断でチームを引っ張っていくリーダーのように描かれているところ。
実際にはもっと協調的な体制で、複数の優秀な頭脳が関わっていたようです。
けれど、この創作の部分が映画のテンポや感情の動きを豊かにしていたとも感じました。
事実と異なるからダメだというより、フィクションであるからこそ、よりチューリングという存在に思いを馳せたくなる。
そんな仕掛けになっていたのではないでしょうか。
MI6の存在とジョン・ケアンクロスの描写
映画に出てくるMI6のスパイ、ジョン・ケアンクロスの存在も印象に残りました。
実際にこの人物は存在していますが、チューリングと直接接点があったという証拠はないようです。
映画では彼とのやり取りが物語を動かすきっかけになっていますが、現実の記録とは少し離れているようです。
ただ、そのあたりの脚色がチューリングの孤立感や緊張感をより際立たせていたとも感じました。
現実では表現しきれない人間の内面を、物語として浮き彫りにする手法は、やはり映画ならではですよね。
映画「イミテーション・ゲーム」実話どのアラン・チューリングの経歴
映画をきっかけに、アラン・チューリングという人物をもっと知りたくなって、あれこれ調べてみました。
すると、やっぱりただの天才という一言では収まりきらないすごい人だったんです。
まず、数学者としてのキャリアがものすごい。
ケンブリッジ大学での研究はもちろん、その後アメリカ・プリンストンでも学問を深めていくあたり、もうスケールが違いました。
1936年には「チューリングマシン」の論文を発表していて、これが現代のコンピューター科学の礎になったというのですから、本当に驚きです。
第二次世界大戦中、ブレッチリー・パークでエニグマ暗号の解読チームに参加。
この暗号を解いたことによって、戦争を2年以上短縮させたとまで言われています。
でも、その功績が当時は極秘とされていたため、表に出ることはありませんでした。
名声ではなく孤独がついてまわった人生
それだけの偉業を成し遂げたにもかかわらず、戦後のチューリングは名誉とは無縁の生活を送っていたようです。
特に1952年、同性愛が犯罪とされていた時代に逮捕され、薬物による治療を強制されるという過酷な現実が待っていました。あのくだりは映画でも胸が痛くなるシーンでした。
自宅でリンゴをかじって亡くなったという有名な逸話がありますが、その死にはいまだ多くの謎が残っています。
自死とされているものの、真相は本人にしかわからない。
そんな静かな終わり方が、より一層切なさを感じさせます。
映画「イミテーション・ゲーム」の中のアラン・チューリング
わたしが一番印象に残っているのは、チューリングがクリストファーという名の機械をまるで親友のように大切にしていた場面です。
実際にはあそこまで感情的に装置に思い入れを持っていたという証拠はないようですが、それでも亡き友人への想いが原動力になっていたというのは納得がいきます。
静かな研究室の中で、誰にも見られずに装置と向き合う姿。
たったひとりで闘っているようなその姿に、なんとも言えない共感を覚えました。
孤独と静寂の中で、自分の価値や意味を探し続けていたのかもしれません。
チューリングの名誉回復はどう進んだのか
2013年になってようやく、イギリス政府がチューリングに正式な恩赦を与えるというニュースが流れました。
映画の最後にも紹介されていましたが、この決定は非常に大きな意味を持っていたと思います。
過去に同じような理由で有罪判決を受けた約5万人の人たち。その一人ひとりにとって、チューリングの恩赦は「報われなかった過去に光が当たった瞬間」だったのかもしれません。
映画を通じて、歴史の陰に隠れていた人たちの存在や、当時の社会の理不尽さに目を向けるきっかけになったのは間違いありません。
映画と事実、その間にあるもの
作品としての『イミテーション・ゲーム』は間違いなく心に残る映画でした。
でもその感動の根底には、実在したアラン・チューリングという人物の存在があります。
映画がきっかけで興味を持った人は、ぜひ本やドキュメンタリーなども手に取ってみてほしいです。
史実をなぞることで見えてくる真実もあれば、フィクションを通じて感じられる感情もある。
その両方が合わさることで、初めて「理解した」と言えるのかもしれませんね。
まとめ
映画『イミテーション・ゲーム』は、アラン・チューリングの驚くべき人生と、戦時下の極秘作戦を描いた秀作です。
事実とのズレがあるものの、それが作品の魅力を損なうことはなく、むしろ観る側の好奇心を刺激してくれる要素にもなっています。
チューリングという人物の経歴や人間性に触れることで、映画を何倍にも深く味わえるようになるはずです。
ぜひ映画だけで終わらせず、背景にある歴史や実話にも目を向けてみてください。
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